石のDB

128 クローム鉄鉱 chromite 富良野市 

001/006


採集日:2017-07-29
採集地:富良野市
地質帯:
岩体 :-
種別1:酸化鉱物
種別2:スピネル
サイズ:7cm

 富良野の野沢鉱山のクローム鉄鉱です。石綿鉱山は閉山して久しく、そこへ至る道は廃道化してきていますが、掘削した露天掘り跡は大きく残っています。
 クローム鉄鉱は、組成式 (Fe,Mg)Cr2O4で、クロームの酸化物です。真っ黒でズッシリ重く、かなりな確率でエメラルドグリーンのざくろ石が表面に付いているいので手に取るとわかります。本標本にも大量についています。このざくろ石は「灰クロームざくろ石」を呼ばれるクロームの入ったざくろ石で、ほぼ全て鮮やかな緑色をしており目立つので探しやすいです。

 クローム鉄鉱はスピネルという鉱物の一種です。スピネルも細かくはたくさんの種類があるのですが、これはクロームスピネルという鉱物がたくさん集まった塊です。クロームスピネルは元々は地下深くのマントルにある「かんらん岩」の中に普通に含まれている鉱物です。その鉱物が現在の蛇紋岩ができた山に出てくるわけです。

 元々、クローム鉄鉱はかんらん岩の中に小さな粒で散在しています。有名なアポイ岳のかんらん岩の中にもたくさんクロームスピネルの結晶が入っています。そのクロームスピネルがかんらん岩の中に何トンもの塊になっていることがあるのです。

 マントルのかんらん岩が地殻変動で地上に出ている箇所が北海道にはあります。アポイ岳は有名ですが、他にも北海道の中軸部(日高山脈、夕張山地、深川の神居古潭や、幌加内、士別、音威子府、中川などです。そこにはかんらん岩はなく蛇紋岩の山が連なっています。

 かんらん岩が地殻変動で徐々に地上に上がってくる途中、地下深くで、かんらん岩に水が作用して蛇紋岩になります。かんらん岩の主構成鉱物のかんらん石は変質しやすく、水や空気に触れていると蛇紋石になってしまうのです。かんらん岩の中に含まれるかんらん石が蛇紋石に変質してしまうと蛇紋岩になります。その時、かんらん岩の中にあったクローム鉄鉱は変質せずに残ります。

 地殻変動が続き、かんらん岩から変質した蛇紋岩が地上に顔を出すと、蛇紋岩は風雨にさらされ粘土になって崩れて削られていきます。そうして、蛇紋岩の中に入っていたクローム鉄鉱の塊が顔を出すのです。

 そのような塊を探し当てて鉱山として採掘していたということになります。

 北海道には大きなクローム鉱山がいくつかありました。平取町の八田、日東、新日東、日高町の三井、現在の鵡川町穂別の八幡、などです。いずれも山全体が蛇紋岩で出来ている地域でその中に含まれていた巨大なクローム鉄鉱の塊を採掘していました。

 地質図を見ると野沢鉱山のところにクローム鉱床のマークが付いています。野沢鉱山でもクローム鉄鉱の塊がとれたようです。(文献1)数トンの塊がとれたとあります。記載内容から推測するに量は少かったようです。野沢鉱山は石綿では日本一の採掘量でしたが、クローム鉄鉱は今一つだったようですね。

 現在となっては、野沢鉱山のクローム鉄鉱は珍しい目なのではないかと思い、載せておきます。

 末筆ではありますが、本サンプルを快く譲っていただいた探索同行者のT氏に深く感謝いたします。ありがとうございました。

※文献1:5万分一地質図幅「山部」