写真撮影視野の拡大 ~リレーレンズ編~

 前回、自宅で使用しているニコンPOHの広視野化の試行の話をしました。
 ➡S型顕微鏡の広視野化
 接眼レンズを見た時の視野は広がり、観察しやすくなりました。しかし、写真撮影時は広視野とは言えません。写真撮影の視野を広げるための要素としては、リレーレンズ(写真鏡筒内にあるレンズや、最終的にフィルム面に結像するアダプター内のレンズなど。。)と撮影面の大きさ(デジタルカメラの場合はセンサーのサイズ)と思います。今回はリレーレンズの倍率を変えてみることにます。

結果

 広げることができました。うちの顕微鏡で限界と思われる視野数23の範囲まで撮影できました。以下に詳細を書きます。興味のある方は読み進めてください。


現状

現状は以下のようにしています。
 ニコンPOHの写真鏡筒に一眼レフを装着して撮影しています。一眼レフにNY-1S(*1)というリレーレンズを装着し、写真鏡筒に挿入しています。
 リレーレンズは、写真撮影時の接眼レンズに相当するもので、撮影面(デジタルカメラの場合はセンサー面、フィルムカメラの場合はフィルム面)に意図した像を映つすレンズです。以下にNY-1Sの撮影領域を赤枠で示します。参考に他の接眼レンズの視野数も一緒に示します。この赤枠矩形の4頂点を結ぶオレンジ色の円がNY-1Sの視野数で、計算すると14.72(小数点以下第3位を四捨五入)でした。公表値15(*1)に近似しますので、だいたいこの程度の撮影範囲と思って良いと思います。


 NY-1Sの撮影領域の面積(赤枠)は、CFUW10xの視野面積(緑枠)の23%です。広いとは言い難い状況です。
※赤枠は、NY-1Sを装着して撮影した写真と、D.H.K.W10x(視野数18(公表値))を装着してスマホで撮影した写真を重ねて、NY-1Sの撮影領域を描いたものです。結構大雑把ですし、顕微鏡や撮影環境による誤差もあると思います。
 NY-1Sで撮影した写真を以下に載せます。クッキリしています。NY-1Sは優秀なレンズと思っています。収差が少ないです。また、視野数15くらいまでの範囲は、うちの対物レンズでは像が明るくシャープに見える部分でもあるので、クッキリ撮れています。

 写真の撮影領域を広げるために実験してみることにしました。

実験1:レンズのないアダプターを使うとどうなるか

 NY-1Sの倍率は1.74倍(公表値)です。NY-1SはセンサーサイズがAPS-Cサイズ以下のカメラに最適化されたアダプターのようです(*1)。うちのAPS-Cセンサー搭載カメラではケラレがなく撮影できます。リレーレンズの倍率を下げれば撮影範囲は広がるはずなので、いっそのこと、レンズが入っていないアダプターを使えば良いのではないかと仮定します。レンズが入っていなければ、対物レンズの像をダイレクトに撮影することとなり、倍率は1倍です。倍率を下げれば、NY-1Sより撮影面に結像する像のサイズが小さくなるはずで、ディテールは細かくなるけれども視野が広がる と思います。一眼レフの画素数はとても多いので、ディテールが細かく写っても潰れないように思えます。

実験環境

顕微鏡:ニコン POH 13型
    ※詳細は以前の記事の最後の(*5)を参照➡S型顕微鏡の広視野化
対物レンズ:ニコン Plan アポクロマートレンズ 4倍
接眼レンズ:なし
カメラ:EOS Kiss X7
JIS鏡筒用装着アダプター(EFマウント)※レンズなし。アマゾンで購入。2000円くらい。

 レンズがないので、対物レンズの像がダイレクトに映ります。対物レンズはCF方式のPlanアポクロマートのレンズを使用します。対物レンズ単独でRGB各色の収差が補正され、かつ、Planレンズゆえ像面湾曲が補正され、周辺部のピンボケが少ないです。レンズなしアダプターでも、それなりにクッキリ映るかもしれません。なお、2倍の対物レンズはレンズ長が長いためか、ピントが合う位置までステージを動かせず、レンズ長の短い4倍のレンズに変更しています。


撮影範囲はどうなったか

 かなり広がりました。うちの顕微鏡の視野限界である視野数23程度までいきまた。
 青枠が撮影範囲です。スマホで撮影したCFUW10xの像の上に撮影画像を重ね、撮影範囲を枠で囲みました。撮影矩形の四隅を見ると、ほぼほぼ対物レンズの瞳をカバーするくらいまで広がっています。

 撮影枠が中心から少し左上にズレています。これは、対物レンズの芯出しができていないためです。また、撮影領域の角にある白い部分はケラレです。CFUW10xでは見えている部分にケラレが発生しています。恐らく、写真鏡筒で撮影しているためではないかと思っています。写真鏡筒は接眼レンズで見える範囲より若干狭いのかもしれません。一眼レフで撮影した画像は以下です。画面の左右の端へいくほど明るさが落ち、少しボケています。これは対物レンズの像がこうなっているのだと思われます。


 なお、対物レンズの芯出しができた状態を想定するため、本記事の先頭にある視野数の図に、中心を合わせて入れたものを以下に示します。


 ケラレがあるので、利用できる部分は少し狭くなりますが、それでも撮影矩形の対角線は視野数23程度あります。

 今回は、レンズのないアダプターを使用し、倍率をまず1倍(*2)に変更して試してみました。現状の限界近く(視野数23)まで広い範囲を撮影できました。それはよいのですが、画像の端の方は暗くなり多少ぼけます。これが補正されるリレーレンズがあるとよいのだけれども。。。フォトショップでレタッチすると綺麗になりそうに思います。

 他の顕微鏡や対物レンズではどうでしょうね。JIS鏡筒の顕微鏡、Planアポクロマートの対物レンズ、NY-1S、APS-Cセンサーの一眼レフで撮影すると、似たような結果になりそうに思います。

 次は、対物レンズの丸い像が大きく写るレンズを試してみたいと思います。


参考文献
(*1)顕微鏡写真撮影アダプター 一眼レフ/ミラーレス/フルサイズカメラ用 株式会社美舘イメージングのホームページ