IWAMOTOの偏光顕微鏡での観察 ~なんとか見れる~

 我が家の最初の本格的な偏光顕微鏡は、IWAMOTOの偏光顕微鏡です。知人から譲り受けたもので、ニコンPOHを入手するまで使っていました。小さくてレトロ感たっぷりの昭和の顕微鏡です。単眼で片目でしか見れないし、レボルバーがなく、対物レンズは1本1本手で交換するなど、不便な部分はあるのですが、偏光顕微鏡としての機能を概ね持っています。オルソスコープ観察はもちろんでき、小さいながらコンデンサとベルトランレンズを備えているので、コノスコープ観察もできます。ただ、雲母検板がなく伸長の正負は見れないです。小さいので場所をとらず移動が楽ということもあります。



デスクトップケーラー照明を使ってみる

 IWAMOTO顕微鏡はステージ下に鏡が付いているタイプで、採光は手動でやらねばなりません。前回のお試し使用で使えそうとわかった「旧式のデスクトップケーラー照明」を使ってみます。コノスコープは明るい照明の方が断然観察しやすいのと、本照明装置を使うと、なるべく標準に近い色温度で観察できるメリットがあります。



ブルーフィルターによる色温度調整について

 S型顕微鏡の時代は、光源にタングステン電球を使っていました。本照明にも以下のような 6V30W の電球が使われています。おそらくタングステン球と思います。


 可変直流電源に接続して点灯します。6V時は白熱電球(3200K)くらいなのだろうと思いますが、眩しいので、通常は2V~3Vの間くらいが目に優しい感じです。そうすると結構オレンジ色で色温度は2000~3000Kくらいかなと思います。そうすると、干渉色がわかりづらいくなるので、タングステン球用のブルーフィルターを使います。このフィルターは、ニコンPOHに付属していたものです。ニコンPOHはケーラー照明が台座の中に内蔵されており、電球はタングステン球でした。このフィルターとタングステン球をセットで使うと、恐らく、ニコンPOHの設計上の色温度になると予想され、それは、偏光顕微鏡観察の標準の色温度だろうと予想します。顕微鏡に装着できないので、鏡の上に置いてみます。



ケーラー光源を使用した時の視野

 本光源を使用して観察した時の視野写真を以下に載せます。視野全体が均一に明るい状態です。視野の中心が少し光が強いよう。輝度差は小さいようで、肉眼で接眼レンズを覗くと均一に見えます。コンデンサを入れない状態では凹面鏡の方が均一に光をとらえることができますね。電圧は3Vに設定しています。

ブルーフィルターなし

ブルーフィルターあり



薄片写真

 オルソスコープでのオープンニコルとクロスニコルの視野像の写真を以下に載せます。この薄片は浦河町に産するランプロファイヤーという岩石です。見た目は玄武岩の中に黒雲母の大きな結晶がブツブツ入っている岩石です。400倍くらいに拡大するとわかるのですが、石基がなく完晶質です。磁鉄鉱らしき不透明鉱物と黒雲母が大量に含まれます。こちらの記事で使用した薄片と同じで、だいたい同じところを撮影しています。[コノスコープ観察 黒雲母] 電圧は3Vに設定しているので、色が濃く出ていると思います。

オープンニコル

クロスニコル


撮影時の様子



コノスコープの観察

 小さい顕微鏡ながらコンデンサとベルトランレンズが付いているので、コノスコープ観察が可能なIWAMOTO偏光顕微鏡。コノスコープで見てみることにします。前回[コノスコープ観察 黒雲母]と同じ黒雲母の結晶で試します。

ターゲットの黒雲母自形結晶  青矢印が指す結晶


対物レンズを40倍に交換してターゲットの結晶に位置合わせします


コンデンサとアナライザーを挿入し、ベルトランレンズを挿入します


アイソジャイアーが見えました
 ニコンPOHで見た時と同じようにアイソジャイアーが確認できました。ニコンPOHより小さい像ですが、クリアに見えました。書籍(*1)ホームページ(*2)によると、黒雲母は二軸性結晶ですが光軸角が小さいため、一軸性と同じように十字のアイソジャイアーが見え、ステージを回転させても十字は動きません。

 本顕微鏡は対物レンズの中心が結構ズレているので、ステージを回すとターゲットの結晶が視野から外れてしまいます。しかし、視野から外れるまでの間、確かに、この十字のアイソジャイアーは動かないです。書籍等の情報と現象が一致します。中心がズレているのは、接眼レンズと対物レンズをニコンのものに替えて観察しているからかもしれません。



IWAMOTO偏光顕微鏡でのコノスコープ写真撮影時の注意事項

 コノスコープ観察した時の様子は以下です。


 ニコンPOHのように、ベルトランレンズを入れると、カメラアダプターで鏡筒にカメラを装着すると撮影できる安易さはなかったです。結像位置がPOHとは異なるのだろか。接眼レンズを装着し、見えている像を一眼カメラで撮影しています。タムロンのSP 90mm F2.8マクロを使用し、接眼レンズを覆うようにセットして外から光が入りづらいようにして撮影しました。なお、スマホではグレアが邪魔をしてダメでした。
注意点は以下です。

①:電圧を上げて明るくする
 暗いとアイソジャイアーが不鮮明でわかりづらいので、電圧を上げて明るくした方がよいです。電圧を上げると電球の寿命が短くなるので、定格の6V以上にはしないようにしています。

②:コンデンサは一番上まで上げておく
 ステージ下のハンドルを回してコンデンサを一番上まで上げておかないとコノスコープが見えないです。サンプルに対して色々な方向から光を当てる必要があり、コンデンサを下げているとそれができないから。。。と認識していますが、間違った理解かも。。

②:コンデンサを完全に入れない
 コンデンサの芯出しができていないためか、コノスコープが一番良く見えるコンデンサの入れ具合は、コンデンサ操作つまみで完全にコンデンサを入れた状態ではなく、少し手前でした。何回かコンデンサを操作してその位置を掴む必要がありました。

③:鏡筒の中心とカメラレンズの中心を可能な限り合わせた方がよいのだろう
 微妙な調整が必要で時間がかかりました。僅かでもズレると、ファインダーで見えていたとしても撮影すると欠けたり写らなかったりします。一眼カメラなのだから、ファインダーで見えている像がそのまま写るではなかった。また、近接撮影なのでマクロレンズがよいのではと思います。


まとめ

 IWAMOTOの偏光顕微鏡については、年代モノでレトロ感がよいです。岩石薄片を観察することはなんとかできそう。旧式のデスクトップケーラー照明については、視野全面が均一な明るさになり、観察がしやすくなりました。ニコンPOH付属のブルーフィルターを使うことで適正な色温度で干渉色を観察することもできると思います。ですが、以下のような注意点がありました。

厳密な観察には向かない
 うちでは設備面の問題があり、厳密な観察は難しそう。元々の本顕微鏡用の接眼レンズと対物レンズのセットがない状態で、ニコンの接眼レンズと対物レンズを使っていますが、コンデンサや対物レンズの芯出しがうまくいかず、消光角やコノスコープのアイソジャイアーの動きを厳密に見ることが難しそう。また、雲母検板がないので伸長の正負は見れません。ですが、小さくて出し入れがしやすく、デスクトップケーラー照明を使うと標準的な色温度での観察が可能なので、岩石薄片作成時に薄片の厚みを干渉色でチェックする用途に向きそう。
 
対物レンズの交換に手間がかかる
 レボルバーがないので、対物レンズは1本1本手で交換する必要があります。本顕微鏡用の対物レンズアダプターを使うことで、顕微鏡へのセットが楽になっていますが、このアダプターが1つしかないので、毎回、回して取り外して取り付けることをしなければならず、低倍率-高倍率を行ったり来たりする観察には向かない。

照明設置作業の効率が今一つ
 均一に視野を明るくするには、照明の位置、コンタクトレンズの位置、顕微鏡のミラーの角度を微妙に調整しながら合わせる必要があり、観察の度にセッティングするのは結構な手間です。調整した状態で据え置きで使用した方が効率が良さそうです。調整の労力を省く意味では、顕微鏡内部にケーラー照明を内蔵しているのは理にかなっていると思えました。

交換用電球がない
 電球が専用品で入手が難しい(インタネット等で探しても見当たらない)。電球の代替を確保しないと、長く使えそうにもないです。



参考文献

(*1):偏光顕微鏡と岩石鉱物 第2版 共立出版
(*2):偏光顕微鏡での観察 倉敷市立自然史博物館のホームページ内
(*3):顕微鏡の構成と仕様 その3 ~照明系(原理・偏射照明)~ OLYMPUSのホームページ内
(*4):顕微鏡の構成と仕様 ~照明系~ OLYMPUSのホームページ内