デスクトップケーラー照明 ~旧式の光源を使う~

 今回は下の写真にある照明装置についてのお話です。顕微鏡の照明装置です。
 このレトロな照明装置は、ケーラー照明装置として売られていました。

 ケーラー照明は、1893年にドイツのケーラー(Köhler)が考案した照明方式で、顕微鏡の視野全体に均一に平行な光を供給する方式とのこと(*1,*2)。現在、ほとんどの顕微鏡がケーラー照明のようです(*1)(簡易的な顕微鏡はミラー使ってますね)。自宅にあるニコンPOHにもケーラー照明が内蔵されており、少なくとも50年前には顕微鏡に内蔵した製品があったということになりそう。スイッチONで均一な明るさの視野が得られるので便利です。
 子供の頃を思い起こすと、顕微鏡の照明は自然光でしたね。顕微鏡のステージ下の円形の鏡に、外の間接光や部屋の照明を反射させて光を得ていました。窓際に顕微鏡を持っていって見たりして、採光が結構面倒だった記憶があります。鏡は平面と凹面の裏表構成で、光が少ない場合は、凹面鏡を使って光を集めていたように思います。



レトロな顕微鏡器具

 インターネットを見ていると、レトロな顕微鏡器具を見かけます。レトロ感が良くて部屋のオブジェとして置いている方もおられるとか。。。私もその気持ちはわかりますね。現代の顕微鏡よりカッコいいと思う。
 顕微鏡の照明装置もレトロ感漂うものを時々見かけます。安いものは購入することがあります。オブジェとしては良いけれども、実際にどう使うとよいのかハッキリわかっていません。顕微鏡のステージ下のミラーに光を供給することはわかるのですが、それだけなら読書用のLED照明でもいけそうな感じがします。
 この手の顕微鏡器具は当時の技術の粋を集めた製品で高価だったと思います。状態の良いものは万単位しますが、動くかどうかわからなかったり、傷んでいるジャンク品はお安いです。今回のはジャンク品です。


デスクトップケーラー照明

 ケーラー照明について知る必要がありそうなので少し調べてみると、ケーラー照明は光源や照明装置だけではなくて、顕微鏡の視野を均一な明るさで照らし、試料を適切なコントラストと分解能で観察するための光学的な構成のことを指すようだと思えました。そこで、ケーラー照明の構成とニコンPOHの対応をみてみました。下の図です。ニコンPOHは開口絞りが見当たらないのと、視野絞りの位置がコンデンサ側にあることを除けば、ケーラー照明の構成順でした。

 ケーラー照明は、ミラーを挟んで、照明側と顕微鏡側に分かれていると思います。照明側を顕微鏡に内蔵しているものが多いですが、図の照明側としている部分(光源~視野絞りまで)が独立した機器であれば、顕微鏡は、図で顕微鏡側となっている部分(光源から見てミラー以降)を構成していればよいことになります。昔は照明装置を内蔵した顕微鏡はかなり高価だったと思うので、図の照明側となっている部分が照明器具として存在していたのでしょうかね。

 実際にみてみると、光源・レンズ・絞りの順で構成されています。レンズをコンタクトレンズ、絞りを視野絞りと解釈すると、上図の照明側構成と同じです。






点灯してみる

 テスターで断線していないことを確認します。

 S型顕微鏡の時代は、光源にタングステン電球を使っていました。本照明装置は以下のような 6V30W 電球でした。たぶんこれもタングステン電球だと思います。


 可変直流電源に接続して電圧を上げていくと点灯しました。定格の6Vに設定すると電流は4.7Aくらい。(計算上は5A(30W=6V×5A)ですが、フィラメントが抵抗になりそこまで出ないのだろう)

 とりあえず使えそうだとわかりました。これも半世紀以上前のものなのだろうか、電球が生きていてよかった。。。


参考文献

(*1):顕微鏡の構成と仕様 その3 ~照明系(原理・偏射照明)~ OLYMPUSのホームページ内
(*2):顕微鏡の構成と仕様 ~照明系~ OLYMPUSのホームページ内