岩石チップ研磨機の製作 ~マキタ刃物研磨機改造~

 今回は岩石チップの研磨機を作ってみることにしました。
 製作日:2022年1月22日

 岩石チップとは、岩石のプレパラートを作成する時に用意する岩石片のことです。岩石チップをスライドガラスに張り付けて、厚さ0.03mmまで削って光が通るようにした上で、顕微鏡で観察します。

※上記写真の岩石の話:写真の岩石チップは、緑色岩内の石英の塊の部分です。岩石チップの左端の青緑色の部分が緑色岩の部分、白いところが石英の塊です。黄緑色のところは緑簾石(りょくれんせき)という鉱物です。この岩石を採集したところは、北海道の中軸部の地質帯で、そこには、太古の昔(おそらく1億年以上前)の海底火山の噴出物が変質したり変成したりした岩石が分布しています。海底火山で噴出した玄武岩は変質して緑色岩という青緑色の岩石になり、変成作用を受けていたりすると、緑色岩の中にはこのように石英の塊があったり、緑簾石という黄緑色の鉱物ができていたり、緑色片岩という一段変成度の高い変成岩になっていたりします


 話を戻し、岩石チップの大きさは、スライドガラスに収まる大きさであればよく、四角くキッチリしている必要はありません。岩石薄片に使用するスライドガラスは通常28mm×48mmで、これに収まるように作ります。スライスする厚さは数ミリ程度です。頑丈な石ならば岩石カッターで1~2mm程度の厚さにスライスできますが、脆い石は厚めにスライスしないと割れてしまいます。

 ここで問題があります。厚くスライスした場合は、手で薄く削るのに時間がかかってしまうことです。疲れてしまいます。ここの工程に研磨機械を導入し、作業時間の短縮を図ろう思いました。

 しかしながら、研磨機は、岩石カッター同様、特殊用途の機械で高額であり、大きな機械なので自宅に置き場がなく、水を使うので排水設備が必要であったりすると、さらに設置が難しくなります。

 そのため、以下のような研磨機が欲しいと思いました。
・小型で卓上に置ける
・排水設備が不要である
・固定設置する必要がない
・簡単に取り出して使え、すぐ片づけられる


方針:刃物研磨機を改造する

 刃物研磨機がお手軽そうと思いました。これだと小型で回転数も低く岩石チップを押し付け易いので、素人が使っても怪我をする危険性も少ないだろうと。かつ、比較的安価で購入できます。

 ですが、刃物研磨機の砥石で岩石を削ることは難しそうです。おそらく、多くの岩石は刃物研磨機の砥石より硬いので、砥石の方が負けて削れてしまうと思われました。

 そこで、刃物研磨機の砥石の上に円形のダイヤモンド研磨盤を載せれば岩石を削れるだろうと思い、探してみると、マキタ刃物研磨機に装着する研磨盤や固定具があり、本格的な岩石研磨専用機材を購入するよりかなり安価にできそうなので、やってみることにしました。


完成状態

 改造して動作させてみました。動画をとりました。



用意した機材

・マキタ刃物研磨機 5420(中古)
・ダイヤモンド研磨盤(*1)
・研磨盤固定治具(*2)
・ゴム板 3mm
・柔らかいプラスチックシート

(*1,*2)甲州水晶屋さんのDIY器具を使ってみました
https://diytool.thebase.in/
甲州水晶屋さんのこれら機材は、マキタの刃物研磨機用で、固定治具(*2)は「9820」専用として販売されています。9820以外で使う場合は自己責任でやらねばなりませんし、設計上の想定された性能が出ないかもしれません。あらかじめ心に留めておく必要があるかと思います。



研磨盤の装着

 マキタの刃物研磨機です。旧式で5420という型です。9820は中古でもお高めなので旧式を使ってみます。

 茶色い部分が砥石です。通常ここで刃物を研ぎます。砥石の真ん中の留め具を外して、甲州水晶屋さんで購入した研磨盤固定の治具(スペーサー)を装着します。


 甲州水晶屋さんで購入した研磨盤を載せます。


 ここで問題が発生しました。砥石と研磨盤の間に隙間ができました。この状態だと、研磨盤がグラつくので、回転させて岩石チップを載せると危ないです。
 原因は、恐らく、砥石が減っている。もしくは、研磨機が型番9820ではないから。。のどちらかでしょう。これは中古品ですので、何度も刃物を研いでいるはず。砥石と研磨盤の隙間は約3mmでした。



研磨盤を安定させる

 3mmの隙間に3mmのゴム板を挟んで隙間を埋めることにしました。ホームセンターで買ってきて、砥石のサイズにカットし、研磨盤装着スペーサーに合う穴をあけてみました。

 まだ少し隙間があります。砥石の外側の方が減りが多いようで若干隙間が残るのですが、これで使えています。

 研磨盤を写真にある黒い固定具で研磨盤に固定するのですが、そのまま使うとダイヤモンドの粒でジャリジャリするので、ゴム板を入れています。



泥よけをつける

 岩石チップを研磨する時は、研磨盤の上に水を少量置きながらやります。この状態で水を研磨盤の上において回転すると、遠心力で水は外に飛び散ります。部屋が汚れるので、研磨盤の周囲に泥よけを付ける必要があります。
 100円ショップで柔らかいプラスチックシートを買ってきて付けてみました。受けた水が研磨機の中に落ちるように装着しています(研磨機はもともとそういう機構なので)。現在、これで使っています。チップが厚い場合は、粗削りである程度薄くするまでこれを使うことで作業時間が短縮できています。粗削り用で厳密な精度を求めておらず、これでもよいと思っています。