作業日:2022.06.03-09
前回、岩石のプレパラート(以降「岩石薄片」と記載)を作成しました。(⇒こちら参照)今回は、岩石薄片全体の写真を載せます。マウスカーソルを乗せると拡大表示します。円形の拡大鏡で見えている範囲が1mmです。
本画像は複数の写真を結合して作成しています。そのため、一部、色味が異なったり、接合部が多少ズレたり、ボケたりしているところもあります。こんな感じに見えることが伝われば良いかなと思っています。
こうしてみると、白い鉱物は、板状の結晶が折り重なっていることがわかります。針のように見えるところもありますが、それは、板状の結晶の断面が見えているのだと思います。この白い結晶は、採集場所、産状、干渉色より「蛇紋石」と思われます。蛇紋石は3種類(アンチゴライト、リザルダイト、クリソタイル)ありますが、このうち、板状の結晶は「アンチゴライト」です(*1)。原岩は見た目に微細なキラキラ感があり、アンチゴライト岩っぽいです。アンチゴライトの日本語名は「葉蛇紋石」(*1)。葉っぱが折り重なるような産状を示すことから来ている名前かな思われます。この岩石は1mm以下の小さな結晶からなる微細結晶タイプですが、肉眼でハッキリとわかる大きなアンチゴライトの結晶からなる岩石もあります。
茶色ないし黄土色の脈は、屈折率が非常に高い(オープンニコルで見ると顕著にわかる)ものとそうでないものがあります。所々、七色に見えます。私の少ない経験からは、複屈折率が高いと七色に見えるようになってきて、「方解石」でした。ですが、この脈は、塩酸をかけても泡が出ません。砕いて粉状にして塩酸かけると、ジワァ~、っと鈍く発泡することがあります。「苦灰石(ドロマイト)」が入っている脈ではないかと予想しています。
一般に、かんらん石から蛇紋石に変質すると、蛇紋石、ブルーサイト(水酸化マグネシウムの鉱物)、磁鉄鉱、ができると言われています。この岩石には、蛇紋石、磁鉄鉱(真っ黒の鉱物)があります。真っ黒の鉱物は回転しても常に真っ黒で光を通しませんので不透明か等軸結晶の鉱物です。この岩石は磁石に付きますので、真っ黒の鉱物は磁鉄鉱と思います。残るブルーサイトはこの茶色の脈の中にあるかもしれませんね。
もし、かんらん岩から変質した蛇紋岩ならば、かんらん岩だった時の組織が残っているのではないかと思うのですが、この岩石には見当たらないです。この蛇紋岩はどのようにしてできたのでしょうね。
※ルーペ表示の作成にあたり、以下のページを参考にしました。サンプルを一部修正して利用させていただいております。
➡Qiita:【初心者向け】JavaScript で虫眼鏡を実装する方法
(*1) 偏光顕微鏡と造岩鉱物 第2版 黒田吉益・諏訪兼位 共著 共立出版株式会社
本岩石薄片の見方について、山の手博物館でご助言をいただきました。末筆ながらお礼を申し上げます。