写真撮影視野の拡大 ~センサー編~

 前回、顕微鏡の写真鏡筒で写真撮影する時の視野拡大の話をしました。
 ➡写真撮影視野の拡大 リレーレンズ編
 多少ケラレが出るけれども、うちの顕微鏡で最大と思われる視野数(23)に近い範囲を撮影でき、従来の撮影時視野数15から拡大ができました。しかし、2点問題がありました。一つは、視野の中心から離れると明るさが下がること、一つは、像の中心から離れると多少ピントがズレる(像面湾曲の影響かもしれない。Planアポクロマートの対物レンズを使用してはいるけれども。。)ことです。思いつく範囲で改善を試してみようと思いました。

写真撮影で広い視野を得るには

 写真鏡筒を利用した撮影において、視野拡大に関係する要素は3つあると思っています。対物レンズ、リレーレンズ(写真鏡筒内にあるレンズや、最終的にフィルム面に結像するアダプター内のレンズなど。。)、そして、カメラ―のセンサーサイズです。対物レンズでスライドガラス上のサンプルの見える範囲が決まります。そして、その範囲の中をどの程度フィルム面(デジタルカメラの場合はセンサー面)に映すかは、リレーレンズの視野数と倍率、カメラのセンサーサイズの組み合わせで変化すると思っています。
 対物レンズの瞳の像を広く撮影するには、リレーレンズの視野数が大きく倍率が低いこと、カメラ―のセンサーサイズが大きいことと思います。ただし、対物レンズの瞳の範囲以上には見えないはずです。どのような像を撮影したいか様々と思えます。例えば、ケラレが出ずに広い範囲を撮影したい、対物レンズの丸い視野を全て大きく撮影したいなどです。

綺麗な広視野を

 対物レンズの像を直接撮影したものは、フォトショップで処理すると使えそうなのですが、像の中心の画像品質が周囲まで続くと嬉しいです。収差や像面湾曲の少ないリレーレンズの利用することが必要に思えます。性能の良いレンズは高額ですので、現在所持しているリレーレンズで最も綺麗に見える「NY-1S」を利用することにします。
 NY-1SはAPS-Cセンサーで撮影すると視野数15相当(*1)です。相当というのは、撮影画像の対角線の長さが視野数15なのだと思います。センサーサイズをフルサイズにすると、視野が広がるのではないだろうか。NY-1Sをフルサイズのカメラに装着して見てみました。
※なお、NY-1Sのメーカーサイトでは、JIS鏡筒かつフルサイズの時は「NY-1S35」の利用がよいとあります(*1)

実験環境

 顕微鏡:ニコンPOH 13型
  ※詳細は以前の記事の最後の(*5)を参照➡S型顕微鏡の広視野化
 対物レンズ:Plan アポクロマート 4x(ニコン)
 リレーレンズ:NY-1S
 カメラ:EOS3

結果

 結果は以下のようになりました。APS-Cの時より視野が広がりました。白い円が視野で、視野数はほぼ19。比較のため、他の接眼レンズ及び、NY-1SをAPS-Cのカメラで撮影した時の視野を記載しています。また、フルサイズセンサーで想定される撮影領域を白い点線で示しています。APS-Cの撮影領域より48%ほど広くなっています。

 フルサイズセンサーのデジタル一眼レフは所有していないので、20年前に使用していた35mmフィルム用の一眼レフカメラ「EOS3」を引っ張り出しました。デジタルカメラが普及する前、一眼レフカメラはフィルムを使っていました。現在のフルサイズセンサーのサイズは35mmフィルムのサイズが元になっていると思います。EOS3のファインダーの視野率(フィルムに撮影される像のうちファインダーに見えている割合)は97%なので、ほぼほぼ、EOS3のファインダーに見えている像がフルサイズセンサーを搭載したカメラで撮影できる像と仮定します。
※上記のサンプル写真は、EOS3のファインダーをスマホで撮影した画像を用いています。

 今回の実験で、NY-1Sの視野数は以下のようになるとわかりました。
 ・APS-Cセンサーカメラに装着:約15
 ・フルサイズセンサーカメラに装着:約19


まとめ
 フルサイズセンサー搭載の一眼レフやミラーレスのデジタルカメラにNY-1Sを装着すると、視野数19の高品質な写真が撮影できる可能性が予想できました。うちの環境では、NY-1Sの視野数は19が限界に思えました。


 なお、これ以上の広さを高品質で得るには、NY-1SWIDE、NY-1Hを使用するとできそうですが、Cマウント用ですので、JIS鏡筒で使用する場合はリスク覚悟になります。NY-1S35はフルサイズセンサー専用設計で視野数17相当とあり、今回の方法と同じくらいの範囲をより高品質で撮れるかもしれません。どれもいかんせん、良いお値段で懐が難しい。


参考文献

(*1)顕微鏡写真撮影アダプター 一眼レフ/ミラーレス/フルサイズカメラ用 美舘イメージングのホームページ