114 含クロムリヒター閃石岩 richterite 士別市
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採集日:2011-06-18
採集地:士別市
地質帯:神居古潭帯
岩体 :犬牛別
種別1:変成岩
種別2:苦鉄質
サイズ:
ここのリヒター閃石は蛇紋岩の中に入っているようです。そこで、母岩付きのものが欲しいと探して得たものです。
ここのリヒター閃石は、蛇紋岩の中に入っているようです。大きな状態で入っているのは見たことがないのですが、小さなものは見かけました。その時にタガネで割ったものがこれです。
リヒター閃石は、アルカリ角閃石(ナトリウムを多く含む角閃石)のうち、ナトリウム-カルシウム角閃石グループの一種です。接触変成作用で生じることが多いようで、接触変成作用で生じた結晶質石灰岩中やマンガン鉱床に出てくる例が多いようです。
沢を歩くと、本標本のように、蛇紋岩の中にリヒター閃石が入った転石があります。蛇紋岩の中に入っていた岩石が変成作用を受けたのだろうなぁ~と思えてきます。リヒター閃石を産する場所は、地質的には「幌加内オフィオライト」の地域です。このオフィオライト(海洋底地殻)が変成作用を受けただろうことは、ここに色々な角閃岩(角閃岩は変成岩)があることからそうなんだろうと思えます。
蛇紋岩は、変質前はかんらん岩です。かんらん岩は、オフィオライト(海洋底地殻内)の一番底の部分(マントルとの境界付近)にあります。海洋底地殻は海嶺のマグマ溜まりから生まれます。マグマ溜まりは、結晶分化作用により、晶出の早いものから、かんらん石、スピネル→輝石→斜長石 と沈殿し、層状になっています。(この層状の状態をキュームレートという)
かんらん石、スピネル、輝石、斜長石のうち、変成作用で角閃石になりそうなのは輝石です。かんらん岩中の輝石のかたまり(輝岩)が変成作用を受けて角閃石のかたまり(角閃岩)になった時に、たまたまリヒター閃石になってしまった。
ここのリヒター閃石岩は大量に発見されていません。記録されているのは20個程だそうですし、巨大な転石はないようです。見つかっている場所は限定的で、例えば、沢の全域で見つかってはおらず、地域内のどこの沢でも見られるわけでもないようです。幌加内オフィオライト地域には、大量の様々な角閃岩があるにも関わらず、リヒター閃石化の条件が整ったのは、ごくごく一部だったことになります。リヒター閃石は一般的に言われるように珍しい鉱物なんだろうと思えます。
角閃石になった輝石のかたまりは、斜方輝岩と推測されているようです。
参照:「幌加内オフィオライトから含クロムリヒター閃石岩の発見」 士別市立博物館報告 第20号