ニコン S-Po 改 ~50年前の顕微鏡を活用する~

50年前の輝きを取り戻す:ニコン S-Po型顕微鏡のレストアと近代化

本記事作成日:2026.01.04
 ジャンク品として購入した顕微鏡「ニコン S-Po」を活用しようと思い、改造した時のお話です。

1. はじめに:時を超えて甦る描写

 こちらは、1971年頃に発売されたニコンの小型偏光顕微鏡「S-Po型」をベースに、現代の観察環境に合わせて改造・整備を施したものです。
 左側がネットで見つけた購入時の状態で、右側が今回の改造後です。標準の「単眼・ミラー照明」というコンパクトな構成から、より実戦的な仕様へとアップデートしました。適切な整備を施せば、半世紀前のジャンク品であっても、低倍率においては現代の顕微鏡に劣らない鮮明な像を得ることができます。

 

2. ニコン S-Po型とは

S-Poは、ニコン顕微鏡の歴史に名を刻む名機「S型」の設計を継承した、ポータブルな偏光顕微鏡です。発売から実に54年が経過していますが、その堅牢な造りは今なお健在です。詳細な仕様は、Nikon MicroscopeU(顕微鏡博物館)にも記録されています。モデル名の「S-Po」は、おそらく「Model-S Polarizing(S型の偏光版)」あるいは「Small POH(POHの小型版)」を意味しているのでしょう。

 

3. 「ユニット方式」が生むカスタマイズの楽しさ

 S-Poを含むS型シリーズの最大の魅力は、その優れた柔軟性にあります。 S型は、接眼レンズ、鏡筒、対物レンズ、ステージ、照明ユニットなど、主要なパーツを自由に組み替えられる「ユニット方式」を採用しています。生物顕微鏡であるS型のパーツをベースに、回転ステージや偏光ユニットを組み合わせることで、目的に応じた偏光顕微鏡へと姿を変えることができるのです。
 この柔軟性は、中古・ジャンク市場においてもメリットとなります。
・パーツの流用が効くため、欠損部品があっても後から補充しやすい。
・自分好みの高機能なパーツ(双眼鏡筒など)へのアップグレードが容易。

 このように、パズルを組み立てるような感覚で「自分だけの一台」に仕上げられる点が、この時代の顕微鏡をいじる醍醐味です。

4. ジャンク品が抱える課題と修理方針

 今回入手した個体には、古い顕微鏡特有の経年劣化が見られました。

【主な故障箇所】
・コンデンサ上下ダイヤルの固着:
 ・全く動かない状態
・ピント微動ダイヤルの動作不良:
 ・なめらかに回転せず、引っかかる感じがある。
 ・重くなったり軽くなったりする。
・各部のガタつき:
 ・ステージ上下のメインダイヤルにガタがあり、作動保持精度が悪い。
  ※ピントを合わせても、ガタの分だけピントがズレる。
   微動ダイヤルの動作不良もあり、高倍率ではピントが合わせ難い。

【観察上の課題】
・視野が暗く、配光にムラがある:
 ・視野いっぱいに均一に明るく照らすことが難しい
  ※ミラーで光を取り入れるタイプので、しかたがない
・視野が狭く、収差も大きい
 ・対物レンズの瞳が小さく、見える範囲が狭い
 ・レンズ収差が大きく、視野周辺がブレる
・長時間の観察で疲労する
 ・単眼鏡筒。屈折率の判定(ベッケ線など)もしづらい

対策としては、以下の2構えの方針で行うことにしました。

 ・故障箇所は「オーバーホールによる機能回復」を行う
 ・観察上の課題は「パーツ交換による近代化」を行う

 おそらく、この鏡体は、長い間使用されずに保管されていたものなのでしょう。顕微鏡の各動作部は、なめらかに動くようにオイルが入っています。このオイルはしばらく使っていないと固くなっていき、ついには固着します。また、微動ダイヤルの動作不良は、ほとんどの場合、内部のテルリンギアの破損です。S型顕微鏡やオプチフォトは、このギアがプラスチック製であり、経年劣化で割れてしまいます。そうすると、微細なステージ移動が難しくなり、高倍率でのピント合わせや、ベッケ線による屈折率比較など精密な操作が難しくなります。S型顕微鏡のテルリンギアは金属製のものに交換するとよいのですが、希少であるため、オーバーホールに出しても修理できないことがあります。


5.鏡筒の交換による視認性の向上
6.均一な明るい視野の実現